仕様にも意見する「クリエイティブなQA」、ZOZOの品質を支えるやりがいとは
ZOZOのQAは「仕様そのもの」にも意見する
——高橋さんがQA業務を担うようになった経緯を教えてください。
高橋:ZOZOにQAチームができたのは、エンジニアやデザイナーなどが集まる技術者組織として株式会社スタートトゥデイ工務店が設立された2015年です。
当時は開発部門内で要件定義から開発、QAまでを一気通貫で担っていたのですが、サービスが拡大していく中で、品質管理に特化した新しいチームを作ることになったんです。私はバックエンドエンジニアとして開発を通してテスト業務を一通り経験していた経緯もあり、2017年にQAチームに加わりました。
その後、2017年に「ZOZOSUIT」のサービスが始まったり、2018年に初の中期経営計画が発表されたりと、さらにサービス規模や集客が拡大する中で、開発側のメンバーは各案件により深くコミットしていくようになりました。そこで、安定稼働や品質管理を担う専門チームとして品質管理本部が立ち上がり、現在は私が責任者を務めています。
——開発担当の経験が活かされている部分とは?
高橋:開発を通じて得た「想像力」が、QAとしての業務に活かされていると感じます。QAは一つひとつの案件やケースに応じて、将来的にどんなことが起き得るのかを想像し、的確に予測していかなければいけません。部署としては「QAはクリエイティブである」という方針を掲げていて、業務に対しても、人間関係に対しても想像力を働かせることを大切にしているんです。
橋本:一般に品質管理部門では、開発側の仕様書に基づいてテストを進めることが多いのかもしれません。それに対してZOZOのQAチームには「仕様そのものから疑う」姿勢があると感じます。ときには「その仕様は本当にユーザーのためになっていますか?」といった意見をもらうこともあり、上流工程からQAと一緒に開発している感覚です。
テスト業務一つとっても事業成長やお客さまへの価値に直結
——なぜZOZOのQAは上流工程から積極的に関わるのでしょうか。
高橋:自分たちが作るサービスの品質に対してイニシアチブを持つことが、ZOZOのQAの仕事だからです。
開発メンバーは当然、不具合を出したいとは思っていないはず。自分が作るサービスに責任を持ち、高いレベルでものづくりを進めています。QAはその高いレベルを超えて、さらに気づきを与えられる存在でなければいけないんです。開発メンバーと一緒に、どうやって品質を上げていくかを上流工程で考える日々です。
品質管理本部の現メンバーには、テストベンダーさんなど他社でのテスト業務を経験してきた人も少なくありません。そうした環境での「与えられたQA業務」と比較して、入社当初は良い意味でカルチャーギャップを感じるメンバーもいますね。
ZOZOは黎明期から自前主義でサービスを成長させてきました。DIY精神を持ち、自分たちで作り上げていくことにこだわっているんです。組織としては分かれていても、事業をより良い方向へ進めていく責任をそれぞれのメンバーが背負っています。テスト業務一つとっても事業成長やお客さまへの価値に直結する。そんな意識を持つことが求められます。
——他社出身の、キャリア入社のメンバーでも活躍できる環境はありますか?
高橋:もちろんあります。QAの仕事にはたくさんのチャンスがあると思います。サービスを成長させるための意見を出す機会が豊富にあり、上流工程にも積極的に関わることになりますから。各種のプロジェクトリーダーとのコミュニケーションを重ねていくことで、組織を牽引する存在としてのスキルも磨かれると思います。
橋本:開発側としては、他社出身の人が新しい視点でどんどん意見を出してくれることがありがたいと感じていますよ。
痛いところを突かれても、QAには感謝の気持ちしかない
——開発側としては、QAにどんなことを期待しているのでしょうか。
橋本:規模の大きな開発案件や複雑な仕様の開発案件においては、上流工程から全体を俯瞰してもらい、「UXの毀損が起きていないか」などの観点で意見を求めています。各開発チームが開発した機能を組み合わせた際にしか気づけない、ユーザー目線での違和感にしっかりとアンテナを張ってもらっており、最終品質の底上げに大いに貢献してもらっています。
何かのプロジェクトが走っているタイミングだけではありません。QAのメンバーは日頃から、いちユーザー目線でZOZOTOWNを使い、気になるところがあれば「これって正しい挙動なんですか?」といったアラートを出してくれるんです。仕様を熟知している開発側のエンジニアでも気づけない部分を指摘してもらえることも多いですね。
高橋:先入観を持たずにサービスに触れることが大切だと思っています。そのためQAのメンバーは普段から「気になる部分がないか」「もっと改善できる点はないか」という視点でさまざまなサービスを使うようにしています。そうした改善点を見つける自分たちの仕事に、強いプライドを持っていますね。
橋本:みんな自分たちが作ったZOZOTOWNというサービスが大好きだし、恥ずかしいものを世の中に提供したくないという思いで一致していますよね。開発側としては、指摘を受けて「痛いところを突かれた……」と思うこともありますし、完璧ではない状態が明るみになる気まずさもあります。だけど、そうした指摘があるからこそサービスを改善できるし、胸を張って世の中に出せるんです。QAのみんなには感謝の気持ちしかありません。
忖度や遠慮をしない「攻めのQA」のままで
——QAと開発の連携で大切にしていることは?
高橋:案件の目的や背景の目線合わせを徹底し、QAと開発がワンチームでゴールに向かえるようにしています。プロダクトの定例会に参加したり、開発状況や懸念点について逐一コミュニケーションを取ったり。
とはいえ、ただ仲良くしていればいいというわけではありません。QAはクリエイティブな仕事をしている自覚を持ち、開発に忖度せず、遠慮せず、ものづくりの一環として言うべきことを言う姿勢も大切にしています。
橋本:開発メンバーも、プロダクトにとっての品質管理の重要性を強く認識しています。常に改善リストを共有しあい、機能はもちろん、デザインやページごとのトンマナの統一感などについても意見交換していますね。ときには、上長である私が指示したことに対して「QAの意見を聞いてから判断します」と言われることも(笑)。
高橋:それくらい、互いの部署同士の信頼関係が醸成されているということですよね。
——開発側としては今後、どんなQAであってほしいと思いますか?
橋本:変わらずにいてほしいですね。現在も強い信頼関係が存在していて、開発メンバーからは「QAチームがあるからこそ安心して開発業務に集中できる」という声がたくさん聞こえてきています。プロダクトに対する改善はもちろん、開発フロー全体を見据えた提案や意見をもらえることもありがたいと感じています。引き続き、「攻めのQA」を貫いてほしいです。
自動化を進め、メンバーがさらにやりがいを感じられるチームへ
——QAチームの今後の展望についても教えてください。
高橋:組織を拡大させていくとともに、技術面では現在も取り組んでいる自動化をさらに推進していきたいと考えています。
テストは一部だけを見ると反復業務も多いのですが、そうした反復を矮小化しないことが大切。すきまを埋めるような仕事はなかなかクローズアップされにくいものですが、しっかりとした基盤とチェック体制があるからこそ、「今日も問題なかった」という日常につながるんです。そうした業務の価値が矮小化されないようにするためにも、人が担っている作業の中で自動化できるものを自動化し、どんどんバージョンを上げていきたいと思っています。
橋本:本質的に人がやるべきことに集中していくということですよね。社内で厚い信頼を寄せられているQAチームのメンバーだからこそ、自動化を進めて、さらなるスキルアップ、レベルアップを果たしてほしいです。
高橋:私自身も、メンバーが今以上に前のめりに仕事をして、品質にフォーカスできる環境を整えていきたいと考えています。プロダクトが大好きという気持ちを大切にして、世の中に貢献していける。そんなQAの仕事のやりがいや面白さを、たくさんの人に知っていただきたいですね。