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「好きな理由を言語化していく」ZOZOのクリエイティブディレクター・大久保が考えるデザイナー成長の鍵とは

ZOZOグループでは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」やファッションコーディネートアプリ「WEAR」をはじめ、様々なプロダクトを提供しています。これらのクリエイティブディレクターを一挙に担うのが、サービスデザイン部部長の大久保。入社から現在に至るまでの軌跡をたどり、デザイナーとしてのキャリア形成の鍵を聞いてきました。

プロフィール

大久保 真登(サービスデザイン部 部長 / クリエイティブディレクター)
2007年に株式会社スタートトゥデイ(現株式会社ZOZO)に入社後、デザイナーとしてZOZOTOWNのUXUIや広告プロモーションを行う。
2013年には同社が運営するのファッションコーディネートアプリ「WEAR」のクリエイティブディレクターとして事業立ち上げを行い、その後も計測ツールZOZOSUITやZOZOMATなどのUXUI設計やコンセプトなどのディレクションを担当。現在は株式会社ZOZOテクノロジーズで、ZOZOグル―プのブランディングを支える。

目の前のデザインを作るだけでなく「体験」から生み出す

ー 大久保さんは、ZOZOグループが開発するデザインを一挙に担っていらっしゃると思います。今日はこれまでのキャリアを深堀りできればと考えています。

正直、「キャリア」なんてかっこいい言葉なんか僕にはないのですが(笑)2007年に中途でZOZO(当時スタートトゥデイ)に入りました。もともとデザインはやっていましたがほとんど独学だったので、入社してから本格的にはじめたような感じです。

当時デザイナーと言うと、今のようなUI・UXデザイナーやWebデザイナーよりも広義で、それこそデザインからコーディングまで全部やるような職種でしたね。ZOZOでも同じくで、まだ明確にシステム開発とデザインが分かれておらずフロントエンドという概念もなかったので、自分でデザインしてそのままコーディングもやる、みたいなことをしていました。

ー 当時のZOZOTOWNのUI開発は、デザイナーさんが開発していたんですね。

昔、デザイン部の中では、いわゆる印刷周りや広告系を担当するチームと、サービス作りをするチームの2つに分かれていて、入社してから5年位はずっとサービスのデザイン担当でした。

そこでZOZOPEOPLE(※2014年にサービス終了)など、当時色々あったZOZOのWebサービスのデザインやコーディングを担当していました。サービス全般をまるっとやっているような状況でしたね。

ー その後にWEARを担当されたということでしょうか?

そうです。社内でWEARの構想ができたとき、ZOZOでは作っていない雰囲気の新しい形で作りたいという思いがあったようで。最初は外部にデザインをお願いしていました。でも、内部のこだわりや思いを外で作ってもらうのって意外と難しくて。そうこうしているうちにどんどんローンチも迫ってきてしまって…。

ローンチ予定日の3ヶ月くらい前に呼び出されて「このまま進めるのは難しい。サービスの全体像からデザインをやってほしい」と突然言われたのがはじまりです。

ー 3ヶ月前…そこから壮絶だったのでは?

そうそう。しかもZOZOTOWNはデザイン部の皆でデザインしていたけど、WEARに関しては「まるっと自分で担当してみて」という感じだったんですよ。更に、その時点で決まっていたのはロゴだけ。それで、プロモーション周りも含めて代理店さんと協力しながら、Web媒体、紙媒体を一括で担当したような感じでした。

その時に、どうメンバーに指示を送ったら良いのかっていう、マネジメントのスキルも一気に必要になり、マネジメントとデザインを両立しながらサービス設計からプロモーションまで全部やりきったというのは、自分の中で大きなターニングポイントになったかなと思ってますね。限られた時間の中でいいものを作るためには、自分1人ではなく、周りの協力が必要。そこで、自身が手を動かさずにどう指示をしたら良いのかっていうことのやり方を学んだ気がします。

ー なるほど。他にもターニングポイントはありましたか?

ターニングポイントっていうものでもないかもしれないけど、目の前のデザインを作る所から経営に寄り添った体験を作るようになったことも大きな変化だと思います。

以前、経営陣の中で事業について「今後どうしたらいいのかな」って迷っている時期があって。そこで毎週のように資料を作ってアイディアを持っていってました。言われたものを作るんじゃなくて、課題だと感じているものについてそれを解決できるようなアイディアを。

ー 「デザインを作る」という所のもう一歩上流のような感じでしょうか。

そう。ZOZOのデザイナーとしてやってきて、徐々に経営判断・経営方針に近いところにデザイナーが携わるようになってきたんですよね。一般的にデザイナーは、決まったものを作ることが多いと思うんですけど、ZOZOのデザイナーは「ユーザーとどういうコミュニケーションを取り、どんなサービスを提供したら良いか」という体験を作る所を経営者と近い所で対話しながら作ることができる。それが、事業会社として、ZOZOのデザイナーとして、すごくいいところだと思ってます。

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デザインもマネジメントも、鍵となるのはディレクション

ー デザイナーとしてのキャリアって、どのようなものがあると思いますか?

うーん…デザイナーと一言で言っても、広義だと思うんですよね。ただ、ZOZOという会社で言えるとしたら、デザイナーは最終的にクリエイティブディレクターを目指していけたら良いんじゃないかと思います。

ー と、いうのは?

スタートは皆デザイナーだと思うんですけど、ずっとデザインだけやっていても、任される領域って狭いと思うんですよね。だからどんどんディレクションまで入っていってほしいなと思います。

マネジメントの観点で言っても、基本的に作り出すデザインのディレクションをすることがメンバーの育成になったり、その人の仕事・働き方のマネジメントに繋がったりすると思っていて。

例えば、上司が一生懸命勤怠承認しているだけなんて、かっこ悪いじゃないですか(笑)「残業しないで」なんて言葉より、良い指示やアドバイスがほしいはず。だから、デザイナーというものは、マネジメントに携わるようになっても、メンバーが作るものに対してディレクションができるということが求められてくると思うんですよね。

ー なるほど。

あと、駆け出しのデザイナーの頃って、1つのことにすごく集中するんですよ。100点のデザインを生み出す為に常に自分で頑張ろうとするのが、いわゆるデザイナーの役目なんですよね。でも、将来的にそれを人に教えていく立場になっていくのであれば、メンバーに適確な指示をしてデザインしてもらえることがポイントになってきます。

成長のために20点分の自律を促す

ー 適確な指示、ですか。

1人で作り続ければ100点は取れるんですよ、あくまでも自分の中ではね。でも、人に指示する時には、人には80点の成果を求めるようにしています。

なぜなら、あとの20点は自分でしか納得できない領域があるからです。自分が指示をし続けて相手に100点を取らせようとすると、すごく大変なことになってくるんですよ。細かいところまで気になるし。

しかもその残りの20点って、いわゆる思考の領域で、本人が磨きをかける部分だと思っているんです。だからこそ、残りの20点はメンバーに委ねています。そういうディレクションすることで、メンバーは質の高いデザインを生み出し、同時にチームとして複数のプロジェクトを走らせることができるようになるんですよね。

ー たしかにそうですね。

自分で100点のデザインを作ろうとすると1本ずつしかできない所を、適確なディレクションをしながら80点という合格ラインを引くことで、多くのプロジェクトを同時に動かすことができるようになります。それもディレクション能力で、特に事業会社の中のデザイナーは、培っていくべきものなのかと思っています。

ー 全員に100点が出るまで入り込みすぎずに、80点を出してもらっていくっていうのは、クリエイティブに限らずチームの成長として、ポイントになるんじゃないかなと感じました。

職人気質な人ほど、自分の部下に100点を取らせようとして頑張っちゃうんですけど、かなり難しい気がしていて。難しいと言うか、80点を取らせる指示って実は大変なんですよね。普通にやってると、大体「何言ってるかよくわかんないっす」って感じになっちゃってて40点とか(笑)そこでどんどん溝が作られてしまうこともあると思うんです。

教える側にとっても、80点を目標に頑張ってもらおうと思うと、あとの20点分ってそんなにストレスが溜まらずにやっていけると思うんですよね。

メンバーに教えるのに困っているマネージャーほど、ついつい自分でやってきた100点を相手に取らせようと思っていて、その20点の部分で悩んでるって人が多いんじゃないかなって思ったりもします。

必ずしも正解があるわけではないからこそ、20点の余裕があるとメンバーも挑戦のしがいがあるんじゃないかなと思います。

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好きを言語化していく

ー 新たなデザインを生むために、日頃からキャッチアップしていることってありますか?

キャッチアップかぁ(笑)デザインに限らずですが、自分の好きな本とか好きな情報とか、あくまでも「自分目線から好きなもの」を見るようにはしています。だって、自分の好きなものしか入ってこないじゃないですか。

もちろん色々なものを学ぼうとするのは決して無駄にはなりません。でも、それ以上に自分の好きなものに興味を持つことの方が大事だと思っていて。そして、その好きなものをただの興味で終わらさないということ。「なぜ好きなのか?」という問いに対し、自分の中で言語化をたくさんしていくことが大事なんじゃないでしょうか。

ー 好きなことを言語化、ですか。

そう。例えば、何か気に入ったパッケージがあったとします。その時に「なぜ好きなのか?」と自分に聞いた時に「可愛いから」だと足りないんです。「なぜそれを可愛いと思ったのか」という思考のプロセスを、例えばフォントや色味や形、そういう所まで言語化して、アウトプットしていくことが大切だと思います。

それを積み重ねると、例えばメンバーにパッケージのデザインを依頼するときも、適確な指示ができるようになると思うんですよね。

ー 日頃から行っていることがマネジメントにも生きてくるんですね。他職種の人たちと上手く連携していく上でも「デザインを言語化できる」というのはキーになるスキルなのではないでしょうか。

そうですね。「なぜ好きなのか」をちゃんと言語化・アウトプットをすると、また次に見えてくるものがあると思います。「キャッチアップしてる」というよりかは、意識してることになっちゃいますけど。

キャリアって、結局人との繋がりだと思うんです。「誰とどういう仕事をするか」が重要なんじゃないかと。曖昧な答えかもしれないけど、職種や会社を超えて様々な人と混ざり合いながら仕事をすることで、自分自身の考え方や見え方がアップデートされ、キャリアも上がっていくんだと思います。

だから、誰かよく分からない人が登壇しているセミナーに行ったり、誰彼構わず会ったりするより、本当に興味があってその人とちゃんと話せるようなものの方が良いんじゃないかと思っています。

興味のある人や好きな人と膝を突き合わせて話せるようになって初めて学ぶことが多いので、そういう意味では、色々な事に手を出すよりも、好きなものを突き詰めていくことが大事かなと思っています。

ー どんどん輪を広げるために、何かできることはありますか?

「Slackは1分以内に返せ」ってやつですね、めちゃくちゃな答えですけど(笑)もちろん寝てる時に来たら無理だけども、できる限りの話です。

「めんどくせえから明日でいいや」とか「週明けでいいや」って考えてしまうのは、好きじゃないからだと思うんです。

例えば、好きな子がいるとするじゃないですか。その子のことが好きなら、連絡が来たらいつだろうとすぐに返すと思うんです。もし「返事は明日でいいや」って思うなら、多分好きじゃないんだと思う(笑)

ー たしかに(笑)

すぐ返したくなるっていうのは「年中無休で仕事をしろ」っていう意味ではなくて、どんどん返したくなるような仕事こそ、自分の好きなことだと思うからです。上司から連絡が来て「返したくねぇなー」って思ったら、会社を変えた方がいいかもしれない(笑)

「この人のために絶対すぐ返したろ!」とか思うのって、自分が楽しいモードにいるわけだし、その環境下で仕事する方が心も健康的で、仕事を好きな証拠なのかもしれません。

ー 「誰と」や「誰のために」というのを意識していくことで、仕事の幅は広がっていくのかもしれませんね。

そう。あと、何かを依頼されたときに、「依頼した人以上にその仕事を考える」というのも大事だと思っています。「これやって」って言われて「これ」をそのままやるだけだと、きっと依頼した人は物足りないんじゃないかと思うんです。


依頼してる相手って「自分以上に考えてほしい」って思っているはず。だから、なるべく言われたまま返すより「なぜこの人はこれを解決したいんだろう?」って、その人の気持ちになって、その人以上に考え抜いて答えを出すというのは、誠実な対応だと思っています。

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ー ありがとうございます。それでは最後に、今後どのようなデザイナーに入っていただきたいか教えていただけますか?

やっぱり事業会社である以上、ZOZOの事業やサービスが好きな人が良いですね。サービスをもっと良くしたいとか、会社が好きだと心から思えている人のほうが良いと思います。

ー それはなぜでしょう?

さっきの話にも通じるのですが、やっぱり好きじゃないと「どうしたい」とか「良くしたい」が思いつかないんですよ。もちろんスキルがあると、即戦力にはなるはずです。でも、もしかしたら将来的にサービスをディレクションするぐらいのスキルまでにならないかもしれないんですよね。

一方、サービスや会社が好きっていう人を採用すると、時間はかかるかもしれないけど、もしかしたら10年後くらいには良いデザイナーになってるかもしれないんですよね。長期的な目で見た時にやっぱり「うちのサービスが好きだ」っていう人と仕事した方が、結果的に良いサービスが作れるんじゃないかなと思っています。

だから、「どんなデザイナーか」というと、やっぱり「サービスが好きな人」「会社が好きな人」と働きたい。周りの人たちを見ていても、例えば特別すごい経験がなかったとしても「魅力があるな」って人がいると思うんです。そういう人って、やっぱりサービスや会社が好きなんですよね。結局、好きなものに取り組んだ方が人は輝けるんだと思います。そういう思いを持った人たちと働けるのを楽しみにしています。

撮影:ZOZOテクノロジーズ コーポレートデザイン部 フォトチーム

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