Biz-PMとTech-PM。「ZOZOTOWN」PMの役割やPJの進め方とは
こんにちは。ZOZOTOWN プロダクト戦略部 Biz-PMブロックの内田、古園、Tech-PMブロックの高橋です。
ZOZOが運営するファッションEC「ZOZOTOWN」のPMについて、どんな事をしているのか、働き方、案件の裏側など、現場メンバーからこのブログを通して定期的に発信し紹介させていただきます。
初回はZOZOTOWNにおけるPMとは具体的に何を指し示すのか、PM組織の構成からPMがやっていることについてご説明いたします。
さらにZOZOTOWNの、他ではあまり見ないPM体系であるBiz-PMとTech-PMの違いもご説明します。
PM職の役割は企業ごとに異なるかと思いますが、ZOZOTOWNではどういった役割を担っているのか、ZOZOTOWNのPMにご興味がある方の参考になればと思います。
ZOZOTOWNでのPMとは
主にZOZOTOWNのWeb/アプリにおいて、新サービスや新機能の企画、開発に関わる様々な人と連携し推進する役割です。
「プロダクト戦略部」という組織名を掲げており、ビジネス担当やマーケティング担当などから要件を吸い上げ、サービス成長戦略を考えながら、デザイナー、エンジニア、QAと連携を密に取り、開発をまとめ、案件リードを行います。
多くのユーザーに支持されるZOZOTOWNでは、多くのユーザーに新しい体験/価値を届けることを目的とした重要なプロジェクトがたくさんあります。
プロダクトの進化に必要な大規模なプロジェクトをしっかり推進することで、サービスの成長をダイレクトに感じることが魅力の組織です。
ZOZOTOWN PM組織について
ZOZOTOWN PM組織が正式に発足したのは、2021年10月で比較的若い組織です。
発足以前にもPM組織はありました(2021年2月の記事参照)が、AI系のプロジェクト推進としてのPMや新規事業立ち上げとしてのPM的な側面が強く、ZOZOTOWN事業の中心案件を推進する役割を持つPMは不在な状況でした。
そのため、PMがいない状態の中で、案件にアサインされた開発メンバーが各々連携を取り合い、各職種別のリーダーが案件を引っ張るケースが多い状態でした。
現場の工夫や主体性を持ったメンバーの協力もあり、これまではなんとかこの体制で開発を進めていましたが、近年のZOZOTOWNは規模拡大やマイクロサービス化に伴う組織再編、関係部署増大による関わる人数の増加など、「開発現場の誰か」が案件をリードするのが難しくなってきました。
この規模拡大の流れと案件のリードへの課題を解決するために、PMという案件をリードする役職に特化した組織「プロダクト戦略部」が誕生しました。
発足当初のメンバーは、2020年中途/新卒採用のメンバーで構成し、PMは主に案件起案のビジネスサイドとの調整/推進をメインとしました。
開発側の取りまとめは以前の状態「開発現場の誰か」が開発リード(開発リーダーと呼称)し、役割を棲み分けしながら案件推進をしていました。
【「開発現場の誰か」という状態が残っている】、【PM組織に開発の知見・ドメイン知識が不足している】という2点の課題があったため、2023年4月にこれまで開発リーダーを担う事が多かったメンバーが開発チームからPMチームに異動し、これまで不足していた開発推進の能力も加え、ビジネス/開発を一貫して推進できる組織に成長しました。
このPM組織拡大と同じタイミングで「ビジネス/開発」の役割をメンバーによって棲み分けするため、
「Biz-PMチーム」「Tech-PMチーム」の2チーム体制とし両チームでタッグを組みながら案件推進をしていく組織となりました。
案件進行の例
ZOZOTOWNの大規模案件の場合、大きく10段階に分けて案件を進行します。
小/中規模の場合、省略するステップがありますが、進行の考え方は同じです。
案件優先度決定
役員・執行役員ならびに開発の本部長にて案件優先度が決められ進める案件が決まります。
開始準備/整理
案件概要の理解/整理を行います。
案件説明会/要求定義
目的/ゴールを明確化、やりたい事を整理し、各職能リーダーに向けて説明会を実施します。
要件定義
開発において必要事項を定義し、デザインを整え、システム基本設計を行います。
開発キックオフ
開発メンバーとキックオフを実施し、概算工数/工期を算出します。
開発設計
デザイン、基本設計を元に各職能別に詳細設計を行い、詳細工数/工期を算出します。
開発
開発を進め、進捗確認、仕様変更調整、テスト準備を行います。
QA/テスト
開発/デザイナー確認、QAテストの推進を行います。
リリース
当日リリースの段取り、監視体制の整理、リリース後の報告を行います。
リリース後対応
リリース後の振り返り、数値の共有、残タスクの整理を行います。
Biz-PMとTech-PMの違い
【Biz-PM】
案件進行の例で紹介したNo.1〜5をメインとして進行。
主にビジネスサイドの関係者とやり取りをします。
役員、営業、マーケティング、法務、カスタマーサポートなどと連携し、開発に入る前段階を整理するのが役割です。
【Tech-PM】
案件進行の例で紹介したNo.6〜10をメインとして進行。
主に開発サイドの関係者とやり取りをします。
エンジニア、デザイナー、QA、分析などと連携し、開発推進をするのが役割です。
案件進行の例のNo.で分けて紹介させていただきましたが、明確な線引きはしていません。
要件定義段階ではTech-PMも一緒に関わりますし、逆に開発/テスト段階でもBiz-PMは関わります。
ひとつの大きな案件では、Biz-PM / Tech-PM から1名ずつアサインして案件推進を行います。
それぞれ得意領域が異なるため、お互い得意な部分を活かして、力を入れるべきところ、任せるところを都度コミュニケーションを取りながら進めています。
具体的にPMがやっていること
ではもう少し具体的にBiz-PM、Tech-PMがそれぞれどのように案件を推進しているのか紹介していきます。
Biz-PM
まずはBiz-PMについて紹介していきます。
Biz-PMは文字通り、ビジネスサイドとの関わりが多いPMです。ビジネスサイドとは、事業担当者や新サービス・新機能の企画担当者を主に指しています。
ビジネスサイドの範囲は役員から営業、マーケティング、法務、カスタマーサポートなどと多岐に渡り、Biz-PMの主な役割はTech-PMをはじめとした開発サイドがより円滑に開発を進められるように連携・調整することになります。
役員陣や事業責任者がどういった目線で物事を考えているか、マーケティング観点で開発着手前に数値的な分析が必要ないか、法律的なリスクがないか、カスタマーサポートへの問い合わせ件数が増えるような影響の有無などを、ビジネスサイドと呼ばれる各部門と連携・調整を行います。
Tech-PM
続いて、Tech-PMについて紹介していきます。
Tech-PMはBiz-PMとは異なり、主に開発部門との関わりが多いPMです。ここでいう開発部門とは、ZOZOTOWNの開発に関わるエンジニア、デザイナー、QAを主に指しています。ZOZOTOWNという巨大なサービスに関わる開発部署は「ZOZOTOWN開発本部」「技術本部」「基幹システム本部」など多岐に渡ります。各部署のエンジニアと開発内容について議論・調整を行うだけでなく、実装されるデザインについてデザイナーと調整を行ったり、リリース前のテスト部分についてQAと調整を行います。
世の中の多くのユーザーに使用される機能として、滑らかな体験が担保されているか、日本有数のECサービスとして恥じないクオリティかを常に考え続けています。
ZOZOTOWNのPMがやらないこと
ここまでZOZOTOWNのPMがどのように案件を推進しているのか、そのための様々な役割について触れてきましたが、実は「ZOZOTOWNのPMがやらない」と決めている役割もあります。ここでは少しだけ、その内容にも触れていければと思います。
詳細デザイン
ZOZOTOWNでは社内のデザイナーがデザイン業務を担っているため、UI・UXを加味したデザインやラフの作成はデザイナーが行います。一方でその前段階として、ワイヤーといった「どの画面にどういう機能を備えているか」わかる資料の作成などはPMで行うことが多いです。
機能開発に関わるプログラミング
主にTech-PMの話にはなりますが、エンジニア出身だからといって、コードを書く・機能開発を行うことはしません。あくまで開発はプロフェッショナルであるエンジニアのメンバーに一任しており、エンジニアが開発に集中できるためにTech-PMが動くようなイメージです。
各開発領域に閉じた詳細設計
ZOZOTOWNはサービスの大きさ故に主要機能においてその分野ごとにエンジニア組織が存在します。新しい機能開発を行う際に基本設計はTech-PMがリードすることが多いですが、詳細設計については各組織のエンジニアに任せています。
数値の詳細分析
マーケティング的な目線でKPI設計を行ったり、PDCAを回すためにどの分析ツールを使うかの議論をリードすることはありますが、ZOZOTOWNには分析を専門とした組織があるため、分析作業自体はPM側で行うことはありません。
テスト全般
ZOZOTOWNにはQA組織があるため、詳細なテストについてはPM側では行いません。ただし案件を進行するPMが最も仕様について把握しているべき、という考えのもと、仕様に間違いがないか、設計通りに作られているかはPM側でも確認はします。
大規模開発リプレイス案件
ZOZOTOWNでは大規模な開発リプレイス案件が動いていますが、ここにPMが入ることはありません。PMが入る案件はビジネスサイドと連携を必要とする、開発サイドだけで閉じることができないような案件がほとんどになります。
このように、ZOZOTOWNのPMはBiz-PM・Tech-PMがそれぞれ「やる役割」「やらない役割」をある程度明確に持ちながらも、案件を推進するために様々な部門と連携し、フレキシブルに動いているのです。
案件のパターン
次にPMがどのような案件にアサインされるのか概要を紹介していきます。
Biz-PM/Tech-PM両方入るのはどういった案件か
ZOZOTOWNでは同時並行でさまざまな開発が行われています。
現状、Biz-PMとTech-PMが両方入る案件はその中の一部となります。
案件の規模としては中規模〜大規模案件をメインに担当しており、要件定義〜リリースまで短いものだと3ヶ月、長いものだと1年以上のものもあります。
開発規模が大きくなればなるほど関わる部署やメンバーの数も増えるので、部署を跨いだ連携役になるPMが必要となる場面が増えます。
PMチームが携わった案件で規模が大きく注目度が高い案件をいくつかご紹介します。
ファッションに関するサステナブル情報を発信する「elove by zozo」立ち上げ
ZOZOTOWN上でビジネスと社会課題解決を両立するため、「ZOZOらしさ」を打ち出すメディアのローンチを推進しました。
ZOZOCARDリニューアル
中長期的なカード事業の拡大を目指し、外部会社と密に連携を取りながらプロダクトリリースまでリードしました。
年齢認証機能導入
新規顧客増加に向け、外部会社選定から入り込み、機能リリースまでリードしました。
A/Bテスト・UXリサーチ
UI/UXの改善、カスタマージャーニーなど新機能実装に向けてだけでなく、他部署への示唆や提案を実施しました。
上記のようにZOZOTOWN独自の機能開発だけではなく、他社サービスとの連携や情報コンテンツ企画の立ち上げなど、ZOZOTOWNに関わるものであれば、種別に関わらず様々な案件を推進しています。
そのため機能開発だけでなく幅広い案件の推進を経験することができます。
案件の推進方法については次回の記事にてご紹介いたします。
まとめ
今回はPM組織の構成からPMがやっていること、Biz-PMとTech-PMの違いなどをご紹介させていただきました。
他企業でPMをされている方は自身のPM経験と重なる部分や異なる部分があったかと思います。
ZOZOTOWNにおけるPM職の歴史はご紹介した通りまだ浅く、チーム一丸となって組織作りや開発フローの改善に邁進しているところです。
そのため決まった案件推進を行うだけでなく、より良い開発体制の構築を自身で模索しチームの組織作りに反映していくことができます。
こういった取り組みで今後もZOZOTOWNの開発に貢献できるようなPMチームを目指していきます。
次回は案件の種類別による推進方法の違いをご紹介しますので、是非ご一読いただけると幸いです。
最後に
一緒にサービスを作り上げてくれる方はもちろん、さまざまな職種でZOZOを良い組織にしてくれる方を募集中です。
ご興味のある方は、以下のリンクからぜひご応募ください!