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AI、データ、分析でZOZOを進化させる!AI・アナリティクス本部のビジョンと実案件紹介

はじめまして。
AI・アナリティクス本部の責任者を務めております牧野です。この投稿では、当チームの組織や業務内容について紹介します。

これまでも採用面談で多くの採用候補者の方にこのチームを紹介してきたのですが、かなりの高確率で「めちゃくちゃ面白そうですね、是非受けたいです!」と言っていただきました。それなら、面談だけでなくコンテンツとして発信することで、より多くの皆さまにこのチームについて知ってもらい、仲間になってもらいたいと考えたのがこの記事を書く理由です。数年前に同じ動機で記事を書いたのですが、それから期間が空きましたので、改めて執筆します。
現在も募集していますので、ZOZOでのデータ分析・管理やAI活用について興味があるという方は、ぜひご一読ください。


1.株式会社ZOZOの事業

ファッションEC「ZOZOTOWN」の運営がメインの事業です。
主にZOZOTOWN内にテナント形式で出店するブランド様の商品を当社の物流拠点で受託在庫として預かり、受託販売を行う事業形態です。

その他にも、ファッションコーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」や、超パーソナルスタイリングサービス「niaulab by ZOZO」の企画・開発・運営、OMOプラットフォーム「ZOZOMO」、生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」、など、多数の事業を企画・展開しています。

2.AI・アナリティクス本部の概要

上記の各事業を横断的にデータ分析、データマネジメント、AIの活用業務でサポートするのがAI・アナリティクス本部です。AI・アナリティクス本部は、ビジネスアナリティクス部、事業推進部、AI事業戦略部の3部門で構成されていて、2024年8月現在、3部門合計で30名強が在籍しています。メンバーの9割強が20代から30代で、男女比は8:2で女性の割合は約2割です。また、中途採用者が全体の8割強を占めており、出身業界もEコマース、インターネット広告、精密機器メーカー、システムインテグレーター、コンサルティングなど多岐にわたります。

各業務の詳細については後述しますが、まずは各領域の概要を説明します。

■データ分析領域

データ分析領域では、サービスや機能の現状分析、キャンペーンの効果検証、不調の要因分析、事業の状況を可視化するダッシュボードの構築など、事業を推進するうえで必要な意思決定をサポートする業務が中心です。

■データマネジメント領域

データマネジメント領域では、技術部門と協力しながらデータのナレッジ管理を進めるとともに、ZOZOTOWNのレコメンドモデルや業務システム、分析業務で使用するデータマートを構築・整理し、全社的なデータ活用の効率改善を図っています。

■AI活用領域

AI活用領域では、業務で利用する機械学習モデルの開発、大規模な機械学習モデル開発におけるプロジェクトマネジメント、生成AIの業務および事業活用の企画を担当しています。

3.AI・アナリティクス本部のビジョン

「会社としてのAIおよびデータの活用レベルを国内有数、世界水準まで持ち上げること」をチームのビジョンとしています。ここで全てを語りつくすことはできませんが、もう少しだけ具体的に書くと、事業インパクトの大きいAIが多数動いており、そのためのデータが完全に作成・整理されているという状態を作りたいと思っています。

ZOZOTOWNをはじめとした当社の各サービス上で商品を見つけやすく、購入しやすくするためには、AIの力が不可欠です。MLエンジニアを中心にレコメンドモデルの改善が日々進められていますが、我々も彼らと連携して可視化、分析、モデルの改善に取り組んでいます。

サービス上での活用に限らず、マーケティングや営業、物流などの各業務領域においてもAI活用の領域が広がっています。後ほど詳述しますが、KPIの予測、販促施策のターゲティング、販促施策の効果検証などで機械学習モデルの構築・運用が行われています。これらのモデルを拡大していくことで、効率と意思決定の精度を向上させていきます。

生成AIの業務での活用も進めています。全社員が日々の業務の中で生成AIを活用し、できることや理解できることはどんどん生成AIに任せる、教えてもらうという流れが作れるように、研修や啓発活動を進めています。また、APIを活用した業務ツールの量産も進行中です。ほぼ全ての部署にヒアリングし、生成AIで解決可能な課題を200件以上抽出、これまで数十件のツールをリリースしました。今後もこの取り組みを継続して、会社全体をより効率的で強力な組織にしていきます。

モデルや機能が利用する特徴量や属性データについても、データベースに蓄積されたログデータを活用するだけでなく、生成AIで作成するというアプローチを取り入れて進化させていきたいと考えています。特徴量データのSSOT(Single Source of Truth)化、つまり利用するデータ間の整合性・一貫性についても、まだ改善の余地がありますので、これも進めています。

データ分析領域においては、これまで因果推論の手法の深化や効率化、分析用のパイプライン整備を進めてきましたが、スピードと品質の更なる強化が課題です。

スピード改善のために、案件管理プロセスの改善やデータに関するナレッジおよびクエリの整備が進められています。各案件はSMLでサイズを分類し、SとMサイズの案件には工数の目標を設定して、費やした工数を分単位で管理し、全メンバーが目標達成に向けて取り組んでいます。

分析業務で「品質」を定義するのは難しいことですが、付加価値の数をカウントする方法で品質改善を図っています。チームでは、例えば、単に販促施策の効果検証を行うだけでなく、次回同様の施策を実施する際により効果が見込める条件を提案する、要件どおりに特集のダッシュボードを作成するだけでなく、特集の条件設定により売上予測を算出できる機能を追加する、といった価値を付加できた案件を「価値付加案件」と定義しています。各チームでは、今期の価値付加案件の目標を立て、日々「価値付加」が可能かどうかを考えながら業務に取り組んでいます。

これまでにも、チームから開発部門に提案したZOZOTOWNの機能改善が採用され、数十億円の取扱高改善に結びついた例が複数あります。

この先は、スピードと品質それぞれの目標を段階的に高めて達成していきたいと思っています。それによって圧倒的に時間対効果の大きい筋肉質なチームになっていくと考えています。いずれは、生み出した品質の価値を直接計っていくということも検討しています。

4.ビジネスアナリティクス部の業務と案件例

ビジネスアナリティクス部は、「難易度が高い」データ分析および業務で利用する機械学習モデルの開発を担当しています。「難易度が高い」には、主に2つのパターンがあります。

1つ目は「技術的な」難易度の高さです。ZOZOでは、多様なポイントキャンペーン、テレビコマーシャル、WEB広告など様々な販促施策を実施しています。これらの施策の後には必ず効果を検証します。ABテストを実施している場合は、基本的に集計すれば効果が分かりますが、ABテストができない施策や完全にランダム化できないテストも多くあり、その都度、因果推論の手法を使い分けて効果を定量化しています。また、販促施策の費用対効果を改善するための機械学習モデルの開発・運用も担当しています。

2つ目は「事業的な」難易度の高さです。例えば、「このサービスの利用ポリシーをこう変更した場合にKPIがどう変わるか」といった相談を受けることがよくあります。その際、意思決定のヒントとなるデータを集め、「この範囲に収まりそうである。したがって、実施する価値がある。あるいは、やめた方が良い」といった提案を行います。ここでは、発想力やデータを組み合わせてストーリーを構築するスキルが求められます。

次に、いくつかのデータ分析案件の具体例を紹介します。

例1)テレビコマーシャルの効果検証

ZOZOTOWNでは、夏と冬の大型セールのタイミングでテレビコマーシャルを放映しています。放映エリアと非放映エリアを設定し、両エリアでの取扱高や新規顧客の獲得状況を比較して効果を検証します。ただし、大型セールの際には様々な販促施策を同時に行うことが多く、非常にノイズの多いデータと向き合う必要があり、状況に応じた工夫が求められます。

例2)日別の取扱高の予測モデルの開発

ZOZOでは、年度や四半期の取扱高目標を達成するために、日次・週次で目標と実績の差異を集計しています。実績が不足している場合は、ギャップを埋めるための施策を行うか、施策の規模を判断する必要があります。そのためには精度の高い予測が求められ、ビジネスアナリティクス部が開発した予測モデルを用いて週次の予測を行っています。

例3)ゆっくり配送の実施前シミュレーション

2024年8月から、お客様が通常配送よりも余裕のあるお届け時期を選択できる「ゆっくり配送」を導入しました。この新しい取り組みを検討する際の事前の費用や収入のシミュレーションも、ビジネスアナリティクス部が担当しています。

5.事業推進部の業務と案件例

事業推進部は、データ分析とデータマネジメントを担当しています。分析担当のメンバーにはそれぞれ担当の事業領域があります。例えば、AさんはZOZOCOSME担当、BさんはZOZOTOWNの検索担当、CさんはZOZOFITと生産支援事業担当といった形です。各メンバーは随時、事業部門のカウンターパートから相談を受け、シンプルなデータ抽出から、販促施策検討のための分析、テスト設計、ダッシュボード構築、キャンペーン効果検証など、多岐にわたるデータ分析業務を提供しています。

データマネジメント領域では、数年前まで各チームで断片的に行われていたデータナレッジの整理を、全社横断の取り組みとしてプロジェクトマネジメントし、データ整理の実務を進めています。また、dbtというデータ変換ツールを導入し、技術部門と協力してデータマートの整理も行っています。

事業推進部についても担当案件の具体例をお伝えします。

例1)ZOZOFITのKPI設計とダッシュボード構築

現在、ZOZOSUITを用いたボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」を米国で展開しています。ZOZOにとって新しいビジネスモデルとなるこのサービスにおいて、事業推進部は事業部門のメンバーとともにKPIを設計し、ダッシュボードに落とし込んで展開・運用しています。事業の立ち上げ期であるため、ダッシュボード以外にも顧客の継続状況や機能の利用状況など、分析テーマが数多く発生し、事業部門と連携してデータでサポートしています。

例2)ZOZOTOWNのおすすめ順の特徴量改善

ZOZOTOWNの商品検索結果は、デフォルトで「おすすめ順」に並んでいます。「おすすめ順」は、ユーザーの閲覧履歴などから作られた特徴量を基にした機械学習モデルで動いています。このモデルを改善するため、技術部門の検索担当エンジニアと協力して新しい特徴量を検討し、シミュレーションを経て提案する業務を行っています。これにより、数%の改善、すなわち数十億円の効果を生んだ事例もあります。

例3)プライスプロモーション施策のセグメントデータマート構築

ZOZOTOWNでのプライスプロモーション施策において、顧客行動に基づいたセグメントデータマートを提供し、売上獲得へ貢献しています。
データマート構築には、dbtを活用したレイヤリングアプローチを採用しています。このアプローチにより、分析用データマートと集計定義の共通化を図りつつ、各レイヤーの依存関係を分離することで、データ品質を高いレベルで維持しながら効率的な運用を実現しています。
上記を一例として、開発部門のアナリティクスエンジニアやデータエンジニアと密接に協力し、データ分析のみでなく、販促や集客等の事業成果に直結するシステムへ効果的にデータフィードできる仕組みを構築しています。

6.AI事業戦略部の業務と案件例

AI事業戦略部の役割は、機械学習モデル開発のプロジェクトマネジメントと生成AIの業務活用および事業活用の企画です。特に力を入れているのは「似合う」の研究(※)であり、この研究はグループ会社のZOZO NEXTのR&D部門であるZOZO RESEARCHと協力して進めています。この研究では、ユーザーに「似合う」服を推薦するモデルの研究開発を行っています。

※ZOZOは創業25年目となる2022年5月に経営戦略に「ワクワクできる『似合う』を届ける」を追加しました。より多くの皆さまにたくさんの笑顔を届けていくために、「似合う」を探求しています。

詳細:プレスリリース「創業25年目を迎えるZOZO、新たに経営戦略として「ワクワクできる『似合う』を届ける」を追加」(2022年5月18日付)

生成AIに関しては、業務活用と事業活用の二軸で進めています。前者の「業務活用」では、各部署の課題をヒアリングを通じて収集し、それらを解決するための生成AIツールをリリースしています。具体的には、商品レビューの文章を自動でチェックするツールや、社内の問い合わせに自動で返信するSlackのBOT、Webサイトの記事の目次を自動生成するツールなどがあり、これらのツールを次々とリリースしています。後者の「事業活用」は、ZOZOTOWNで利用するデータの生成やZOZOTOWNの機能上での生成AI活用を推進しています。

AI事業戦略部も、担当案件の具体例を紹介します。

例1)問い合わせの自動分類ツール構築

ZOZOTOWNのカスタマーサポートチームには、日々多くの問い合わせが寄せられます。問い合わせはカスタマーサポートシステム上で分類されますが、業務改善のための課題を抽出するには、より詳細な分類が必要でした。生成AIを活用して、自動で細かい分類を付与するツールを構築しています。

例2)汎用自動分類ツール構築

前述の生成AIを使った分類業務の自動化の例に続き、ZOZOの業務において「分類」を必要とするケースが多々あります。そこで、Googleスプレッドシートに分類したいデータを貼り付け、プロンプトを入力するだけで自動で分類するツールを構築しました。データ分析業務において、データベースに存在しない新たな分類データを付与する際にもこのツールが大いに活躍し、これまでできなかった分析が可能になっています。

例3)類似画像検索のプロジェクトマネジメント

ZOZOTOWNの商品ページには、その商品と見た目が似た商品を検索できる「類似画像検索」という機能があります。この機能の改善案件が複数進行中であり、その中で検索結果の「おすすめ順」を変更するなどの改善も行っています。これら機械学習を用いた機能のプロジェクトマネジメントもAI事業戦略部の仕事です。

7.業務環境

当チームの業務環境は、ストレスの少ない環境だと考えています。

業務で使用するデータは、個人情報をマスクしたうえで、ほぼGoogle CloudのBigQueryに集約されています。BigQueryに対してSQLを実行してデータを取得し、Googleスプレッドシートで整形し分析するのが基本的な作業フローです。機械学習やライブラリを使用した分析・モデル構築を行う際には、Jupyter Notebook上でPythonを記述するメンバーが多いです。

最近では、全社でGitHub Copilotを導入し、コーディング作業を支援しています。データに関するナレッジは、事業推進部が中心となってまとめたData PortalというConfluenceページに集約されていますので、初めて利用するデータがある場合はこのページを参照します。SQLのサンプルも同ページにまとめられています。

過去の案件も数年分が一つのGoogleスプレッドシートに一覧化されており、1,000件を超える案件を参照することが可能です。これらの案件には、依頼・相談部門、ステータス、担当チーム、担当者、さらに「効果検証」「現状分析」「BI構築」などの分類が付けられており、自分が担当する案件に類似した過去の事例を調査できます。

分からないことがあれば、AI・アナリティクス本部内で詳しい人にSlackやミーティングで気軽に質問できますし、エンジニアやビジネス職など他職種のメンバーに質問しても、皆が丁寧に教えてくれます。部門内外の関係性は非常に良好で、「データをなかなか出してもらえない」「関係性がないので、まずは関係性を築くところから始める」といったことに時間を費やす必要はありません。

業務はフルリモートのため、多くのメンバーが自宅で作業しています。関東圏以外に在住しているメンバーも数名いますが、フルリモートでもオフィス出社は可能で、東京の紀尾井町オフィスや西千葉オフィス(本社)で業務を行うメンバーもいます。

上記でも少し触れましたが、メンバー間の関係性は非常に良好です。部署内の情報共有会もあり、分析事例の交換や新しく学んだ技術についての発表も行われています。業務上の関係が良好であることに加え、年代の近いメンバーが多いため、プライベートでも仲が良く、週末に集まったり、一緒に旅行に行くこともあるようです。

8.成長環境

当チームは、成長の場としても非常に良い環境が整っていると自負しています。

若いうちから各部署のマネージャーやディレクター、本部長などのマネジメント層と議論したり、分析結果を直接プレゼンテーションする機会が多い会社・チームです。

案件の相談が途絶えることはなく、常時100件以上の案件が並行して推進されています。案件を協業する部署も、マーケティングや営業から物流、カスタマーサポート、USED事業、新規事業など、事業部門や開発部門、R&D部門など多岐にわたり、多様な経験が積める状況にあります。

メインの事業であるZOZOTOWNのサービスは、年間1,100万人を超えるお客様にご利用いただいています。事業部門や開発部門と協力して作り上げた機能や販促施策でお客様に喜んでいただくことをイメージしながら、データに向き合うことには非常に大きなやりがいがあると思います。

ZOZOTOWN以外のサービスや新規事業もそれぞれ、社会や業界、お客様の課題を解決するための事業です。新規事業には特有の課題・問題も多いですが、データやファクトを重視する企業文化が根付いているため、分析メンバーとして価値を発揮しやすい環境です。事業をデータで良くしていきたいという強い思いがある方には、非常に恵まれた環境だと思います。

大きな投資を左右するような分析テーマも多く、自分が担当することで会社や事業が改善される実感を得やすい環境であることも、当チームの魅力の一つです。

OJT以外にも、書籍購入支援制度や本部内の研修があり、学びながら力をつけていきたい方にとっては、最適な環境だと思います。

このチームで一緒に働きたいと思った方は、ぜひ採用ページからエントリーしてください!お待ちしています。


ZOZOでは、エンジニア・デザイナーを含む各職種で採用を行っています! 採用情報はTwitterでもお知らせしているのでぜひチェックしてください!